2018年08月30日
中国・アジア
研究員
小野 愛
日本危機管理学会は5月12日、第27回年次大会(2018年度)を筑波大学東京キャンパス文京校舎で開いた。産官学それぞれの観点から、危機管理のあるべき姿について白熱した議論が展開された。
今大会の統一論題「日中平和友好条約締結40周年を巡って」では、①中国人民解放軍の戦力と実力(下平拓哉・防衛省防衛研究所主任研究官)②中国「一帯一路」構想と日本企業のリスクマネジメント」(中野哲也・リコー経済社会研究所副所長ほか2人)③サイバー強国中国と如何に向き合うか(原田泉・国際社会経済研究所主幹研究員)―が発表された。
このうち、原田氏は「今後のサイバー安全保障ではAI(人工知能)が重要になる」と指摘。その上で、AIで大量の通信を監視することで異常を検知し、新たな脅威の予測と迅速な対応が可能になると主張した。
原田泉氏「サイバー強国中国と如何に向き合うか」
ただし、日本はAI関連の特許出願数がマイナス傾向にあるのに対し、中国はその約3倍達するという(2010~2014年を2005~2009年と比較)。このため、原田氏は日本がAIの研究開発によってサイバーインテリジェンスを強化する必要性も指摘。その一方で、「一番重要なことは、日中の信頼関係を醸成して戦わないことだ」と強調した。
この後のパネルディスカッションでは、日中関係のあるべき姿について、熱い議論が交わされた。とりわけ最大のリスク要因については、「日中がお互いを知らないこと」という指摘が相次いだ。日本は人口減少など課題先進国としての経験を中国に伝えていくべきであり、経済活動だけでなく、人と人との交流を大切にすべきだという意見への賛同が広がりを見せた。
パネルディスカッションも白熱
これに先立つ自由論題では、①企業の不祥事対応における行程表の重要性について(大森朝日・大森朝日事務所代表)②日本企業におけるオープン・イノベーションのリスクに関する考察(榊原一也・国士舘大学准教授)③民間企業における弾道ミサイル攻撃対応と課題(芦沢崇・東京海上日動リスクコンサルティング主任研究員)④エレクトロニクス業界に40年携わってきて思うこと...国力の衰え(亀田修・スーパーセキュリティーソリューションズ代表取締役)⑤東京オリンピック・パラリンピックの安全・安心な開催に向けた官民連携のあり方(岩井克己・倉敷芸術科学大学客員教授)―が発表された。
なお会員総会では役員改選案が可決され、池田十吾会長(国士舘大学教授)が名誉会長、酒井明常任理事(東京福祉大学特任教授)が特別顧問に就任。また、原田泉理事長が会長、中野哲也理事が理事長に就いた。(事務局はリコー経済社会研究所内、入会案内などは日本危機管理学会ホームページhttps://crmsj.org/)
(写真)筆者 PENTAX K-50
小野 愛